5-23
ナルシシズムとか作為みたいなものはいやだと思う。でもその感覚が
強くなりすぎると、ほとんど何も言えなくなってしまう。何事もバランスが
大事という平凡な真理。
もうすぐいまの会社に入社して1年になる。振り返ると、いいことはあまり
なかったなあと思う。つらいことはありすぎたし、給料も低かった。
今の時代の格差について、過去と比べてどうなのか、客観的に見てどうなのか、
私は知らないけど、ほんとに狂った世の中だと思う。
誰でもできるような仕事は安い給料で、インフラのようなものとしての価値が
ほとんど認められていないのだと思った。それは競争を勝ち抜いたものが
多くの富を得るというこの社会の価値観が反映されているからだ。
今まであったことは変えられない、解釈が変わるだけだと思う。
若くして両親を亡くした人が中卒か高卒で働いて、その職場で結婚相手と
出会ったから、その人は両親が健在ならすぐに働くことはなかっただろうから、
彼女は両親がいないことを前向きにとらえられるようになった、というエピソードを
本で読んだ。過去が変えられるということはそういうことなのだと思った。
事実は変わらない、その解釈は現在の自分がして、それは時間とともに移り変わる
から変わっていく、というふうに理解した。
今までの人生はこういうふうに過ごした、時間がたっていったという事実は
変わらない。最近誕生日だったせいか、その事実とか時間の重みを感じて
苦しい。この現実には救いみたいなものはないということは、経験として、
皮膚感覚として私は感じた。20代の時にはそんな考えを持ったことはなかった。
30代になってあるときにそう思ってから、世の中の夢、理想、キラキラしたもの、
そういうものがほとんど全部うそに、ニセモノに見えるようになった。
それはもちろん私にとってということであって、べつに多くの人が勘違いしている
みたいな話じゃない。
というわけでだいぶ憂鬱な感じだけど、これからどう生きていくのか、
途方に暮れる。似たようなことをくり返すうちにどんどん時間が過ぎてしまう。